本プロジェクトは、EUにとって主要な、以下2つの問題点を政治・外交的視点から取り扱う。
第一の研究軸は、市民社会の表現様式と経済活動を支える市場の類型の関連性である。ソブリン債の危機の余波のなかでEUが中国とパートナーシップを築こうとすると同時に、世界貿易機関(WTO)が、暫定的に定められた猶予期間以前には中国の「市場経済」を認めない決定をしたことについて分析する。EUと中国はもとより、EUと東アジア諸国の関係にも注目する(日本、韓国、台湾における社会的自由主義と経済的自由主義の関係分析も行う)。
第二の研究軸は、人権の現在と未来、他文化との関係において可能になるであろう、人権というコンセプトの再検討である。社会的自由主義から経済の新自由主義にいたるまでのさまざまな論理に目を向け、自由主義概念を法的・政治的視点から分析する。
これらの問題点を議論することは、昨今の世界的経済危機のなかで、互いに非を押し付けあうユーラシア大陸の両極の国々にとって緊急の課題である。グローバリゼーションはときに欧州の経済成長を犠牲にしてアジア企業の競争力を増徴させたと捉えられている。逆に中国側は、ヨーロッパの社会的特権こそが信用不安の原因で、厳格な規制が必要と見る。EUと中国の相互理解を深めることにより、それぞれの暫定的仮説の見直しをすることが大いに有用である。最適な認識論的基準を制定し、最新の経済・政治・法的現実を新たに評価しなおすことが必要である。